【番外編〜ブレイクタイム〜】私自身のお話し
ブレイクタイムとして私自身について少しお話しする。多少なりとも本編につながるルーツもあるかなと思う。もちろん興味がない方は飛ばしていただいて構わない。
私には4つ歳上の兄がいる。
高校生のときにドラムを始めた兄は、同じ部屋で寝ている私を尻目に、来る日も来る日もドラムの練習を続けていた。
そんな兄の影響をもろに受けた私は、いつしか兄と同じドラムという楽器を演奏するようになり、気づけばバンドを組み、楽器店とライブハウスに入り浸るようになっていた。
物事が一切長続きしなかった僕の、唯一長続きしたものがドラムだ。私はドラムという楽器に出会えたことで、本当に人生が明るく素晴らしいものになった。
ドラムがきっかけでバンドを組むことができ、たくさんの繋がりが増えた。なんの取り柄もなかった私に「自慢できるスキル」を与えてくれた。
ちなみに、私はドラムが特別上手かったわけではない。そもそもドラム人口が少ないから相対的に認めてもらえた、と気づくのはこの何年か後である。
今だから言えるが、高校もロクに行かずにバンドに明け暮れる日々を過ごし、平日でもライブがあればライブを優先していた。
完全にバンドの虜になっていた。このままプロドラマーとして生活ができればどんなに幸せなんだろうかと思った。
そして月日が経ち、私は大した結果も残せないまま20歳も半ばに差し掛かっていた。バンドは続けていたが、拠点は相変わらず地元だったし、たまにツアーに行く程度の規模感だ。
一人暮らしをしていた僕は生計を立てるために楽器の知識を生かして、とある楽器メーカーで非正規として、たまにドラム講師として、週に2、3日の夜はバーテンダーとして働いていた。
それでも収支は安定しなかったので、アフィリエイト用のブログを毎日更新して、少しのチャンスがあればFXのスキャルピングで小遣いを稼ぐような、とにかく慌ただしい日々を過ごしていた。
空いた時間を見つけてはバンド練習を行い、主に土日はライブをする毎日。
正直、睡眠時間は平均3、4時間くらいだったし、普通の人の中では頑張っている方だったと今でも思う。
でも、ふとしたタイミングで思い始めた。
この日々を過ごしていく中で、私は一体何になりたいんだろう。結果が出ていなければ誰も何も認めてくれないし、自分では努力と思っているこの毎日も、結果が出なければすべてが無意味なんじゃないか、と。
もちろんライブで会う人たちはチヤホヤしてくれるし、自分が一瞬でも特別な存在なんじゃないかと錯覚させてくれる。
仕事も本当に楽しくやれていた。好きな楽器やお酒に関わるものだったし、ストレスなんて感じたことがなかった。
でも現実は、必死に働いても同世代よりも稼げていない、安定性も将来性もない一人の男として目を背けたくなる状況。
今よりも終身雇用制度の考えが強い風潮だったこともあり、多数派少数派で言うと間違いなく少数派の生き方に、世間からの理解はもちろん得られない。
それでも、今自分がやっているすべてのことが少しずつレベルアップしていけば、必ず成功できると、そう信じて疑わなかった。
そんなある日、バーテンダーとして働いているときに一人の若い男性が入店してきた。歳は近く見えるが、見るからにビジネスマンという風貌だ。
店は私一人だけで回しており、他にお客様がいなかったため、必然的に一対一の状況になった。
話をしていく内に、どうやらこの男性は飲食店経営者だということが分かった。新規のお店をオープンさせるために土地を探しており、現地の顧客層を知るために現地の飲食店に足を運んでリサーチしているとのこと。
私もバンドをやっていることを伝え、お互いに夢について語り合うようになった。
ところが、相手が5年後、10年後の明確なビジョンを語っているのに対して、出てこないのだ。私の口から具体的なビジョンが何も。
バーテンダーをやっていて失格なのかもしれないが、本当に言葉に詰まってしまった。相槌で誤魔化していたものの、本当に私が目指しているゴールはどこにあるんだろう?と会話の最中にも関わらず、心の中で自問自答していた。
その気持ちが相手にも伝わったのか、次にその若い男性はこう言った。
「迷いがあるのは自信がないからだ。自信があれば迷わない。」
どういう話の流れで彼がそう言ったのか、今となっては覚えていないが、そのフレーズだけは鮮明に覚えている。
当時の私は明らかに音楽で食っていく自信がなかった。なぜなら、どうしたら音楽で食っていけるのか、具体的なイメージができていなかったからだ。
それは周りに音楽で成功した人がほとんどいなかったことが原因かもしれない。でもそれは本当の原因じゃないと今なら確信を持って言える。
本当の原因は「どうやって音楽で食っていくか真剣に考えていなかった」からに他ならない。惰性でも続けていればなんとかなる。頑張っているから報われるはずだ、という根拠のない楽観主義がそうさせたのだ。
そこからの行動は早かった。当時続けていたバンドは解散し、私は単身東京に行くことになる。幸いにも楽器業界に居続けたことが功を奏して、楽器業界での仕事も見つかった。
そして今に至る。
何者でもない私個人の話をここまで読んでくれてありがたく思う。本編を書く上で、どうしても自身のバックボーンを書いておく必要があった。なぜ私が「成功しなかった側の人間」だったのか、今なら理由が明らかであるためだ。
おそらく多くのバンドマンが、かつての私と同じように「どうやって音楽で食っていくか真剣に考えていない」と思う。
いや、考えていないというよりは、シンプルに考え方を知らないだけなのかもしれない。
でも私はよく理解している。
世の中のバンドマンが本当に頑張っていることを。世間からどう思われようが、真っ直ぐに自分の好きなことに向き合って、日々を懸命に生きていることを。
かつての私がそうであったように、生活のことや将来のこと、不安で押し潰されそうになるような夜も越えて音楽の力を信じている。
であれば、今の自分の知識と経験とマーケティングスキルを掛け合わせて、どこかのバンドマンにとってめちゃくちゃ役に立つ「考え方」に徹底的にフォーカスした書籍を作ってみようと思った次第だ。
長くなったので、この章はここで終わりにする。
後編もより実践的な内容をお伝えしていくので、是非このまま最後まで読み進めていってほしい。
この本があなたの明るい未来につながるように。少しでも役に立つことができれば嬉しい。
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