【ステージ8】オンラインライブはまだ早い
コロナ禍の影響で、オンラインライブに力を入れているバンドが多いと聞く。
悪いことは言わない。オンラインライブはまだ早いからやめておこう。
理由はこの3つだ。
①競合相手にメジャーバンドも入ってくるため太刀打ちできない。
②配信自体に多くの費用が掛かる
③余程のことがなければクオリティーが低く見られる
1つ目から説明していこう。
オンラインライブが盛んになり出したのは、大きなメジャーバンドが動き始めたからだ。
それ以前にも、SHOWROOMのようなサービスで配信を続けているアーティストは一定数いた。
ただし、これがメディアに取り上げられ、一躍ムーブメントを引き起こしたのは間違いなく規模の大きなバンドの参入が要因だ。
規模の大きなバンドが参入するということは、配信や広告宣伝費に莫大な金額を投資できるバンドを相手にしなければならない、ということを意味する。
現時点でこれは無謀だ。
さすがに勝ち目がない。
マーケティング概念の基本中の基本だが、我々のようなまだ何者でもない存在がステップアップしていくには「差別化集中戦略」しかない。
バンバン広告宣伝費を掛けて、グロスでそれを回収できる資源があればまだしも、総合力勝負となれば間違いなく集客の面で勝てない。
相対的に周りに勝つことを積み重ねていく段階である内は、オンラインライブでのお披露目はもう少し我慢しよう。
次に配信費用の問題も挙げておく。
私が関係者からリサーチした話によると、カメラは少なくても6台ほど、リアルタイムの配信であれば、その音量調整をするPA、カメラを担当するスタッフ、照明、さらに一部有観客にしようものなら、配信用のPAの他にライブ用のPAも必要だそうだ。
言うまでもなく配信用のフォームを借りる料金も発生する。それに加えて受付などのスタッフ、物販をやるならそのスタッフも必要だろう。
これに加えてライブハウス自体の料金や交通費、ケータリング代(飲食費など)も含めなければならない。どんなに安くても30万は掛かるはずだ。チケットを3000円で売ったとしても100枚売れてトントンだ。
ちなみに3000円というのは、メジャーバンドなども含めたオンラインライブの相場だ。
当然、一度でもオンラインライブを観たことがあるお客様の頭の中には、過去に観たオンラインライブのクオリティが基準となっている。
それがメジャーバンドなのか、はたまたアマチュアバンドなのかは分からないが、ここで考えてほしいのは「新規でない場合、一度オンラインライブを観て、リピーターになっている可能性が高い」ということだ。
つまり、過去にオンラインライブを観て多少満足感を得られた経験があるということだ。そして、そのお客様には過去のオンラインライブという一定の基準がある。
その基準を超えなければ、そのお客様は次回からあなたの配信ライブに来ないだろう。基準はあなたが日頃闘っているステージよりも遥かに猛者が潜んでいるステージだ。
だからもう一度言う。
オンラインライブはまだ早い。
最後にクオリティの問題が付きまとう。
オンラインライブに限った話ではないが、アーティストが実際に出している音は、実は自分ではコントロールできていない。
これはどういうことかと言うと、ギタリストがアンプから鳴らしている音は、マイクで拾った音がPAによって補正された状態でスピーカーから再生される。
つまり他の楽器とのバランスを含めて、音が加工されているということだ。
リアルなライブの場合には、ちゃんと自分の背中で音が鳴っていて、スピーカーの音だけでなく実際の音もミックスされた状態で音が鳴る。
しかしオンラインの場合はどうだろう?
実際にどういう音が視聴者の元に届いているのか、リアルタイムで確認することは難しい。さらに言うと、ライブハウスのPAとオンライン配信用のPAでは求められるスキルが異なる。
ライブの方が臨場感や全体的なバランスを直接聴きながら直感的に操作できることに対して、オンラインの方はイヤホンやヘッドフォン、スピーカーなど、PA自身のモニター環境によっても聴こえ方が異なる。
そしてさらに厄介なのが、視聴者のモニター環境が様々であることだ。
音にこだわりのある方であれば、自前の高級スピーカーで聴ける環境があるかもしれない。人によってはノートパソコンのスピーカーで再生して楽しむ人もいるかもしれない。
当然モニター環境が変われば音質も変わり、音質が変われば印象もだいぶ変わってくるはずだ。ここはオンラインライブの大きな障壁として今後もたちはだかっていくだろう。
以上、3つの点をお伝えした。
ここではオンラインライブのデメリットだけを切り取って紹介したが、もちろん良い面もたくさんある。
育児などの事情でライブに行きたくても行けなかった層への新規開拓もできるし、今までライブ会場へ通っていたお客様の移動の負担は減り、時間と金銭の負担も減っただろう。
何よりアーカイブでの視聴が可能な面は、オンラインライブの特に大きなメリットの一つだろう。視聴者は、好きなときに好きな場所で好きなように好きなアーティストのライブを観ることができる。
バンドマンからしても演奏フレーズの耳コピやライブパフォーマンスの勉強として、うってつけの教材になり得るとも思う。
だからこそ、いま一度フラットな視点で見るべきだ。上記で挙げたように、オンラインライブの恩恵を受けているのは大半が視聴者だと言うことを理解したほうがよい。
そして、最後にもう一度だけ言わせてほしい。
オンラインライブは、まだ早い。
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